伊坂幸太郎氏の短編集『逆ソクラテス』は、小学生を主人公にした5つの物語が収められています。日常の中に潜む大人の「先入観」に対し、子どもたちが知恵と勇気で立ち向かう姿が、爽やかかつユーモラスに描かれており、読後には清々しい感動が残ります。
表題作『逆ソクラテス』:大人の偏見に挑む
本書の表題作である『逆ソクラテス』は、小学6年生の「僕」(加賀)と、彼の友人である「草壁」を中心に展開します。草壁は、担任の久留米先生から「ダメなやつ」というレッテルを貼られ、何かと見下されています。久留米先生は、自身の知識や判断が常に正しいと信じて疑わない、まさに「ソクラテス」とは逆の思考を持つ人物として描かれています。
物語の核となるのは、久留米先生の先入観を覆すべく、主人公たちが練り上げる奇抜な作戦です。草壁の評価を上げるために、テストの点数を意図的に操作したり、学校のデッサンコンテストで絵をすり替えたりと、子どもたちならではの純粋で大胆な行動が、読者の心を掴みます。この物語は、作中で語られる以下の言葉を象徴しています。
「完璧な人間はいるはずないのに、自分は完璧だ、間違うわけがない、何でも知ってるぞ、と思ったら、それこそ最悪だよ。」
この言葉は、大人である私たちにも深く突き刺さります。人は誰しも間違いを犯す可能性があり、自身の知識や経験に固執することは、新たな発見や成長の機会を奪うことになりかねません。子どもたちの視点を通して、凝り固まった大人の思考に一石を投じる、示唆に富んだ作品です。
他の短編が描く、多様な子どもの世界
『逆ソクラテス』に収録されている他の4つの短編も、それぞれ異なるテーマで子どもの世界を描き出しています。例えば、『非オプティマス』では、いじめ問題に直面する子どもたちの葛藤と成長が描かれ、『アンスポ』では、スポーツにおける「ずる」と正義について考えさせられます。どの物語も、小学生ならではの視点と、伊坂幸太郎氏らしい軽妙な筆致で綴られており、読者は自身の小学生時代を懐かしく思い出すことでしょう。
読後感:爽やかな感動と、新たな気づき
本書を読み終えた後には、子どもたちの純粋な行動力と、彼らがもたらす小さな「革命」に、爽やかな感動を覚えます。そして同時に、私たち大人が無意識のうちに抱いているかもしれない先入観や偏見について、深く考えさせられるきっかけを与えてくれます。伊坂幸太郎氏の作品に共通する、伏線の巧みさや、登場人物たちの魅力も健在で、一気に読み進めてしまうこと間違いなしです。
『逆ソクラテス』は、子どもから大人まで、幅広い世代に読んでいただきたい一冊です。特に、教育に携わる方や、子育て中の方には、新たな視点と気づきを与えてくれることでしょう。
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